サッカーを文化としてとらえ、地域での活動を通してアートとスポーツの融合を提案するプロジェクト「アジア代表日本」は、サッカーワールドカップが開催される年ごとに活動が行われています。FIFAワールドカップ南アフリカ大会が開催される今年は、福岡でもさまざまなイベントが行われました。同プロジェクトのプロデューサーであるアーティスト、日比野克彦氏にお話をうかがいました。
---- 今回のプロジェクトを始めたきっかけを教えてください。日比野:ひとつは僕がサッカー好きだということ。自分の好きなアートとサッカーが一体になる活動があるといいなと思ったんです。僕の中ではサッカーもアートだし、アートも逆に言えば身体表現のひとつ。絵描きの筆の運びとか、陶芸家が土をこねるのも身体表現だと思うし、イメージを形にするという点ではサッカーも同じ。そう考えることでアートの魅力がもっとスポーツ的に広がってくるし、スポーツが単なる勝負事ではなく文化や表現としても広がっていく。スタジアムにしか行かない子をミュージアムに連れ出し、ミュージアムにしか興味のない子をスタジアムに連れ出したいということで、このプロジェクトを考えました。
---- この活動は一過性ではなく、今後も続けていくことを考えていらっしゃるんですよね。最終的な目標のようなものは?日比野:サッカーは世界で一番競技人口の多いスポーツで、ボール一個でやれます。シンプルなスポーツだけに、それぞれの民族が持っているリズム感や考え方や感性などが表に現れやすい。例えばゴルフは、アフリカ人がやってもアメリカ人がやってもそう変わらない。けれどもサッカーは、アフリカ人がやればアフリカ人の身体表現になる。だからサポーターも自分たちの民族表現だと熱くなれるんです。
サッカーは世界の共通語です。そのサッカーが今年はアフリカで行われる。アフリカは人類が生まれた大地で、ここから10万年かけて人類が世界に広がっていった。それぞれの地域でそれぞれの文化が生まれ、サッカーが生まれて今度はそれがアフリカに帰っていく。サッカーのワールドカップはただのスポーツではなく、民族の表現のぶつかり合いだと思います。そういう風に考えれば、ワールドカップは次の世代の文化づくりや進化のきっかけにもなると思うんです。アートが美術愛好家だけのものではなく、スポーツも単なるゲームではなく、もっと広がりのあるものになっていく。今は民族や環境や経済や文化という領域で分けていますが、そういう分類ではない、次のステージが見えてこないかなというのが僕の思いです。
---- そうした活動を通じて日本のサッカーをご覧になって、日本のサッカー文化に何か思いのようなものはありますか?
日比野:サッカーを自分たちの表現や文化として受け入れるには時間がかかります。ヨーロッパには100年以上のクラブチームがたくさんあって、スタジアムの横には必ずミュージアムがあり、おじいちゃんが孫にチームの歴史を語っている。それに比べると日本はまだまだサッカーの歴史が浅い。単なる欧米文化としてやってきたものなので、文化として根づくには時間がかかると思います。けれどもいつか日本代表チームがワールドカップで優勝すれば、サッカーを文化としてとらえられる民族になれたときだと思います。子どもたちにしてみればすごい夢でしょうし、それこそ日本の文化とスポーツが融合する瞬間です。可能性はゼロではないと思います。
---- このプロジェクトは子どもに焦点を当てたものなのでしょうか?日比野:子どもだけでなく年齢問わず参加してもらえます。美術の一番いいところは、それぞれのその人らしさが見えてくるところ。おじいちゃんはおじいちゃんらしく、幼稚園児は幼稚園児らしく、オヤジはオヤジらしく、女子中学生は女子中学生らしく。それが美術の魅力です。赤ちゃんは言葉をしゃべる前から何かを描き始めますが、自分の気持ちで自由に描いている。みんな最初はアートが好きなんです。でも学校の美術・図工の授業で嫌いになってしまう子が多い。それは美術の先生が悪いわけじゃなくて、同じ年の子ばかりを集めて比較するシステムになっているのがいけない。同じリンゴを描いても、10人いたら10種類のリンゴがあるはず。年齢がバラバラなら若い人とおじいちゃんでは描くリンゴも違うだろうし、みんなの絵を見ることで自分らしさも分かってくる。だから年齢バラバラのほうが美術にはいいんです。福岡だったらアジアの人もたくさんいるから、例え言葉は通じなくてもワールドカップを共通テーマに何かを作ればコミュニケーションがとれる。地域に根ざしたスポーツクラブがあって、子どもから大人まで活動して、それが地域の文化となっているように、そういう地域活動の中にアートがあってもいいと思っています。むしろ美術は課外活動として行うべきなのではないかと思いますね。
---- そういう活動なら、子どもたちも生き生きとできるでしょうね。これからもプロジェクトの活動を楽しみにしています。本日はありがとうございました。
ASIAN MATCH FLAG PROJECT<4月10日~5月30日>
日本とアジアの国々とのマッチフラッグを、古着を活用して市民の皆さんと一緒に制作しました。これらのマッチフラッグは九州国立博物館に展示されました。アビスパ福岡の大塚社長も参加されました。
Asia Base Camp Dazaifu (ABCD)<4月17日~7月11日>
「アジア代表日本2010」の情報発信、サポーターたちの情報交換の場となっているABCDが太宰府に開設されました。マッチフラッグのワークショップもここで開催されました。
BLUE FLAG<5月上旬~7月11日>
太宰府や福岡市内各所に「SAMURAI BLUE」の旗を掲げ、地域が一体となってワールドカップを盛り上げていきます。
アジア代表日本を応援するトーク<5月30日>
日比野克彦氏がゲストを迎えてくり広げるサッカー談議を大丸パサージュ広場で開催しました。スペシャルゲストには同じくサッカーファンである木梨憲武氏が登場しました。
HIBINO CUP 2010 FUKUOKA<5月30日>
福岡市市役所前ふれあい広場にて、ゴール・ボール・ユニフォームを参加者たちが手づくりするサッカー大会を開催。老若男女、さまざまな価値観の人々が共に楽しみました。
日本サッカーミュージアム所蔵ペナント展<6月1日~6月18日>
サッカーの試合前に交換する各国のペナント。九州国立博物館に、日本代表が戦ってきた相手チームのペナントを展示する貴重な機会です。6月1日の初日には、日本サッカー協会の田嶋幸三専務理事も来館されました。